2026/08/29 17:51


今回は、能登で出合った染付と印判の器を4点ご紹介します。

古伊万里の系譜を感じさせるものから、明治期以降に日用の器として広く親しまれたイゲ皿まで。

同じ藍と白の器でも、細密に描き込まれたもの、大きく余白を残したもの、手描きの揺らぎを楽しむもの、印判によって文様を反復するものと、それぞれに違った表情があります。

最初は、私たちが暮らす町の名家の蔵からレスキューした、時代伊万里の印判小皿。

買い受けをご依頼くださった方のお祖父様は茶人で、長年大切に集められた茶道具や古美術の中に、この器も残されていました。

わずかに揺らぎのある輪花の器形に、藍一色で細かな文様がびっしりと配されています。

見込みには花文。その周囲には網目を思わせる細密な文様がめぐり、白く抜かれた意匠は、蛤のようにも、柘榴や無花果のようにも視えます。

何を描いたものなのか想像してみるのも、古い器を眺める愉しみのひとつです。

次は、柔らかく波打つ輪花の縁をもつ染付の膾皿。

見込みには松竹梅を思わせる意匠が円を描くように配され、その周囲を伸びやかな草花が埋めています。

細かな線で描き込まれた花や葉と、白く残された余白。その対比によって、器の中に動きが生まれています。

藍の濃淡や筆の揺らぎも美しく、古伊万里の系譜を感じさせながら、どこか肩の力が抜けたような伸びやかさがあります。

飾るというより、料理を盛って日々使いたくなる器です。

3点目は、能登の市場で視つけた印判のイゲ皿。

細かな凹凸を連ねた縁に、丸文や角形の窓。その中には菊花を思わせる花や幾何学文、蔓草のような曲線が組み合わされています。

なかでも面白いのは、どこか異国的にも感じられる文様です。

幾何学と植物の文様が反復しながら重なる姿には、アラベスクにも通じるような雰囲気があります。

イゲ皿は明治期の肥前地方で生まれたとされ、その後、各地で日用の器として広く親しまれました。

古美術として構えて眺めるというより、今の食卓に自然と入ってくる。そんなところもイゲ皿の魅力だと思います。

最後は、能登の市場で仕入れた染付の8寸皿。

見込みには大きく広がる花文。その周囲を八角形に囲み、さらに縁を8つの窓に分けて、宝文や植物文を配しています。

古伊万里に見られる芙蓉手の構成を受け継ぎながら、描き方は大らかで自由です。

とりわけ中央の花文には、アラベスクを思わせるような異国的な雰囲気もあります。

時代は幕末から明治期頃と思われます。

この頃になると、それぞれの産地で育まれてきた意匠や技法が互いに影響し合い、産地ごとの特徴だけでは捉えにくい器も現れてきます。

この皿にも古伊万里の系譜を色濃く感じる一方、九谷を思わせるところもあります。

どこでつくられたのかを無理にひとつに決めるよりも、そうした境界が少しずつ曖昧になっていく時代の面白さも含めて眺めたい1枚です。

細密な印判から伸びやかな手描き、そして明治の日用器へ。

4点を続けて視ていくと、染付というひとつの技法の中にも、時代やつくり手によってさまざまな表現があったことが分かります。

そして、それらが能登の旧家や市場に残り、私たちのところへめぐってきた。

古い器そのものだけでなく、その器が移動してきた時間も含めて、次の使い手へ手渡していければと思います。

今回ご紹介した4点は、オンラインショップのBASE/STORESに掲載しています。

能登から、次の使い手へ。