2026/09/10 07:10
能登の市場で、九谷の作家・吉田勝山による器をまとまって仕入れました。
吉田勝山は1938年、石川県石川郡野々市町野代に生まれ、1963年より作陶生活に入ります。日展をはじめ、日本現代工芸展、中日国際陶芸展、石川県現代美術展などで作品を発表。石川県現代美術展最高賞、金沢市工芸展県知事賞などを受賞し、1989年までに日展へ10回入選しています。作品には「九谷 勝山」の銘が入ります。
今回仕入れたものには、勝山自身が制作したと思われる作品を記録したアルバムや、制作途中の器なども含まれていました。器には展示・管理のためと思われるシールが残され、暮らしの中で使われてきたものというより、制作の見本や展示品として残されていたものと思われます。
今回はその中から、染付で「龍」を描いた3つの器を紹介します。
最初は、口縁に口紅を施した龍文の大鉢。
見込みいっぱいに描かれた龍は、鱗や鬣まで細かく描き込まれ、周囲にも文様がびっしりと広がります。さらに外側にも龍や波、雲を思わせる文様が続き、器そのものをひとつの画面として扱ったような密度の高い作品です。
一方で、龍の表情にはどこか愛嬌があり、これだけ描き込みながら堅苦しくならないところにも勝山らしさを感じます。
2つ目は、同じ龍でもまったく異なる表情を持つ鉢。
こちらは細密に描くのではなく、呉須の濃淡や滲み、筆の勢いをそのまま生かした、古染付を思わせる自由な絵付けです。龍の姿も整えすぎず、数本の線と濃淡によって軽やかに描き出されています。
古染付は、北大路魯山人が強く惹かれた古陶磁のひとつでもあり、魯山人自身『古染付百品集』を編み、「明の古染付」について文章を残しています。
完成度や均整とは別のところにある、筆の自由さやおおらかさ。勝山もまた、そうした古染付の魅力を自身の器へ取り込みながら、現代の器として描き直していたのではないかと思います。
最後は、草花の中に3匹の龍を描いた大鉢。
器面いっぱいに枝葉と花を巡らせ、その間を縫うように3匹の龍が配置されています。龍だけを主役として大きく描くのではなく、草花と同じ画面の中に溶け込ませているところが面白い。
口縁には口紅を施し、外側にも草花や文様が描かれています。古染付を思わせる染付の質感を残しながら、画面いっぱいに草花を広げた構成には、古典の写しだけではない、勝山自身の意匠が感じられます。
同じ作家が、同じ染付で、同じ龍を描いても、その表情はこれほど変わる。
細密に描き込まれた龍。
筆の勢いだけで現れたような龍。
草花の中を泳ぐように描かれた龍。
今回まとまって残されていた勝山の器を視ていると、古い意匠を単に再現するのではなく、それを何度も自身の手で描きながら、自分の表現へと引き寄せていった作家の姿が視えてくるようです。
3点とも、megurumeguruのオンラインショップにてご紹介しています。
