2026/09/11 14:22


能登の市場でまとまって仕入れた、九谷の作家・吉田勝山の器。今回はその中から、古染付の意匠や筆致を取り入れた3点を紹介します。


吉田勝山は1938年、石川県石川郡野々市町野代に生まれ、1963年より作陶生活に入ります。日展をはじめ、日本現代工芸展、中日国際陶芸展、石川県現代美術展などで作品を発表。石川県現代美術展最高賞、金沢市工芸展県知事賞などを受賞し、1989年までに日展へ10回入選しています。


今回仕入れたものには、勝山が制作した作品を記録したアルバムや制作途中の器なども含まれていました。器にはシールが残されたものもあり、制作の見本や展示品として残されていた一群だったことがうかがえます。

まずは、3匹の龍を大胆な筆致で描いた大皿。


呉須の濃淡や滲みをそのまま生かし、龍の姿をわずかな線で捉えています。先日紹介した細密な龍文とは対照的で、形を描き切るというよりも、筆の勢いから龍が立ち現れてくるようです。


整いすぎない線、余白、濃淡の揺らぎ。古染付を思わせるおおらかな表現ですが、それを単なる古作の写しにせず、現代の器として軽やかに成立させているところに勝山らしさがあります。

2点目は、同じく龍を描いた鉢。


見込みの円を中心に、2匹の龍が向かい合うように配置されています。こちらも龍の輪郭を細部まで描き込まず、呉須を走らせるような自由な筆致。外側には唐草文を巡らせ、古染付の器に視られるような内と外で異なる景色をつくっています。



1点目と同じ龍文でありながら、器の形が変わることで絵付けのリズムも変わる。勝山が古い意匠を決まった型として扱うのではなく、それぞれの器に合わせながら描いていたことが感じられます。

最後は、松竹梅を描いた鉢。


見込みには松を中心に竹や梅を配し、周縁には幾何学文や唐草を組み合わせています。外側にも絵付けが続き、器を手に取ったときに内外で景色がつながっていく構成です。


龍を描いた2点とは異なり、こちらには古染付の中でも日本の食卓や茶の湯と親和性の高い、どこか親しみのある意匠が選ばれています。それでも筆致は堅くならず、古典的な松竹梅を勝山らしい軽やかさで描いています。


古染付は、主に中国・明末期の景徳鎮民窯で焼かれ、日本の茶人の好みに応じてつくられた器も多く残されています。端正さだけを求めない自由な筆致や、呉須の濃淡、少し崩したような意匠は、日本で長く愛されてきました。


北大路魯山人もまた、古染付を含む中国の古陶磁を蒐集し、その造形や絵付けを自身の器づくりへ取り込んだ作家のひとりです。


勝山の3点を並べて視ると、古いものを忠実に再現することよりも、そこにある筆の自由さや意匠のおもしろさを拾い上げ、いま使うことのできる器へと置き換えようとしていたように感じます。


古染付から受け取ったものを、自分の筆で描き直す。


今回の3点には、そんな吉田勝山の仕事がよく表れているように思います。


3点とも、megurumeguruのオンラインショップにてご紹介しています。