2026/09/19 20:41

能登の市場でまとまって視つけた、九谷の作家・吉田勝山の作品。
1938年、石川県野々市町野代生まれ。1963年より作陶を始め、日展に10回入選。石川県現代美術展最高賞、金沢市工芸展県知事賞などを受賞しています。
これまで龍を描いた色絵や染付などを紹介してきましたが、今回は少し趣の異なる3点を。
最初は、赤絵による幾何学文の7.5寸鉢。
器の内側を埋め尽くすように細かな幾何学文を描き、その上を太い帯状の文様が横切ります。細密な線の反復と、大きく動く構成。その対比によって、器全体がひとつの抽象画のようにも感じられます。
赤を主体とした限られた色数だからこそ、線そのものの強さが際立つ1点です。
こちらは、染錦の7.5寸鉢。
染付と赤絵を捻るように配し、その中へ大胆な丸文を重ねています。唐草を思わせる細かな文様と、大きな丸文。その異なるスケールがぶつかり合うことで、器面に強い動きが生まれています。
整然と文様を並べるというより、器そのものを画面として捉えているような構成です。勝山の作品のなかでも、特に絵画的な力を感じる1点だと思います。
最後は、色絵の7寸八角鉢。
再興九谷、とりわけ宮本窯などにみられる意匠を思わせる構成を取り入れながら、中央には茄子、周囲には花と細かな文様を配しています。
古典的な九谷の要素をしっかりと残しながらも、どこか軽やかで、現代の食卓にもすっと馴染む。このあたりに、古い意匠をそのまま写すのではなく、自分の器へ置き換えていく勝山らしさがあるように思います。
この八角鉢は、普段の「九谷 勝山」とは異なる銘が入っているのも興味深いところです。公募展への出品を意識したものなのか、再興九谷を意識した作品だからなのか、理由までは分かりませんが、今回まとまって視つけた作品の中でも少し異質な存在です。
また、釉薬の状態によるものと思われる貫入や、外側にはスレによって曇ったようになっている部分があります。
3点を見比べてみると、細密な幾何学文、染錦による大胆な構成、再興九谷を意識した色絵と、表現はかなり異なります。
それでも共通しているのは、過去の意匠をそのまま再現するのではなく、一度自分の中に取り込み、いま使う器としてつくり直していること。
今回まとまって勝山の仕事に触れたことで、ひとりの作家が古典とどのように向き合い、自分の表現へと変えていったのか。その幅も少しずつ視えてきたように思います。
